〜ある日の接客サービスで〜
○月○日 「今から行くから…」とご常連のお客様のご予約をいただいた。
「今回は、仲間同士4人で少しお酒を飲みながら美味しい物をちょっと…」とおっしゃる。「かしこまりました。お待ちしております」
ここからすでにサービスは始まっている。
仲間同士4人? 通常は2名ずつの向かい合わせの長方形のテーブル席を作るが、今回は「お仲間」「少しお酒」「ちょっと」といったキーワードがいくつかある。
いつもよりテーブルは狭いが正方形のテーブルにして、4人で囲むようなお席を作ろうと判断する。
料理は? 「ちょっと?」「お酒?」少なからず多からずの前菜は必要だ。
調理場に行き、担当者に肉類、海鮮類、野菜類の3種で5品以内の前菜盛り合わせを大皿一つ盛りで準備させる。
後の料理は前菜を召し上がる時の様子やお飲み物などを聞きながら判断、準備することにする。
このお客様はいつも料理は「お任せ」いただいているからである。
奏功しているうちに「こんにちは…」「どうも、いらっしゃいませ」とご来店。
「一人遅れてくるから3人で始めてるから・・」とのこと。
「かしこまりました」。
調理場に飛んでいき、先ほどの前菜4名分大皿一つ盛りを一人ずつの皿盛りへの変更を依頼する。そのまま提供はできない。遅れてくる方の前菜が乾いてしまい、味が落ちるからである。
作り直している間に飲み物を聞きに戻る。
「最初はビールでよろしいですか?」「そうだな?まずはワインでも軽く飲もうかな」とおっしゃる。おっと、いつもとパターンが違うな、と思いながら「かしこまりました」ここはあえてホスト的な方のお言葉だけを聞く事にする。
ホスト的な方はご常連、他のお二人は初めてのご来店だったからである。また、非常に親しそうな間柄でもあったからである。

そしてここでもキーワード「軽く」「一人が遅れている」が出てきた。
前菜の内容を考慮して、飲み口は軽めだが芳醇な香りがある赤ワインをグラスで提供することにする。 「カリフォルニア・カーネロス産のピノ・ノワールです」と言いながらサーヴ。そこに良いタイミングで3人分3皿で前菜が出てきた。
「う〜ん、ベストタイミング!」と心の中で思う。スタートが決まれば接客気分もさらに乗ってくる。
しばらく様子を見ながら お席の方には少し行かない事にする。

しばらくすると遅れていたお一人が到着。
お席に付くなりお仲間に「ワイン飲んでんの?じゃ、僕もワイン、まずは白!」
最初からボトルワインを開けなくてグラスワインでご提供が正解!である。
お客様にも余計なご負担をかけずに済むし、遅れてきたお客様のお好み通りに提供できるし…。
赤ワインを飲まれているお客様のお一人のグラスがもうすぐなくなりそうだ。
「次は、何を飲まれますか?」とお聞きする。初来店の方が「中国料理だから紹興酒、ロックで飲みたいな、いい?」と他の方の賛同を求めている。「いいよ」と一同賛成している。
よし!その後の料理の流れは大体決まった。赤ワインの方は紹興酒のオンザロックに移る、そして今来られた方はまだ白ワインが残っている。
次は貝類とウニと少しの野菜とでさっぱりした味付けの炒め物を出そう。
全員紹興酒に移った頃に、広東料理の伝統的な煮込み料理で、紹興酒を味わってもらいたいので牛バラ肉のじっくり煮込みを、最後はレンコン、ブロッコリ、チンゲンサイ、カボチャなど14〜5種の野菜を香り高く炒めた料理で締めくくることし、それぞれのお料理の分量はもちろん人数分ということではなく3名分位の量がいいだろう。
ストーリーは出来上がった。
参加者全員が揃っているので後の料理はすべて一皿盛りで提供し、お客様自身で取り分けていただけるようなそんな中国料理の良さをも楽しんでいただくことにする。
ご注文の紹興酒は、ここはボトルでご提供し、バカラ製のどっしり重く大きめのオールドファッションドグラスを形も柄もそれぞれ違う物4種のグラスでサーヴする。

その後追加でもう一本紹興種をお飲みになって、仲間同士で「じゃ、もう1軒飲みに行こう」ということになられたようで「ご馳走様」といって4人でわいわいがやがやお店を後にしてお帰りになりました。

「ありがとうございました、またお待ち申し上げております」…

To be continued

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