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〜あるワイン・バーのオヤジの話〜
昔、大変お世話になった人がいる。もちろん今でもお世話になっているのだが、ワインでの師匠であることは間違いない、というかつくづくそう思う。
その名前は「金谷さん」という。今も新宿でワインバーをやっているし、もちろんたまにお邪魔して飲ませてもらう。
10年くらい前の話だが、久しぶりに友人と二人でお店に出かけてみた。「なんだよ、久しぶりじゃん!」といいながら席に案内された。
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一度離れ、しばらくして戻ってくると「何、飲む?」といいながらその手にはしっかりワインボトルを握っている。いつもこんな感じである。 一度離れた時にすでに飲ませるワインを決めていたのだ。聞けば、顔を見たときにすでに決めていたらしい。
「今日は難しい顔をして来たから、じっくり飲むだろうと始めから重めのポムロール、シャトー・ラグランジュ‘90」こちらが「じゃ、それお願いします」なんて言う前に すでにソムリエナイフが動いている。それでも一応、ホストテイスティング用に僕に少量のワインをグラスに注ぐ。
色合いは非常に濃く見るからに重厚肉厚、香りもすぐに開いてきて、いかにも美味しそうではないか。「どう? いいでしょ?これ。」 「はい、実に旨そうです!」(まだ口に含んでいないので・・・・。)
しかし、まさしく今日の飲みたかったワインのタイプである。
軽い食事をしながらワインを飲む場合、普段は軽めの白ワインをグラスで飲んでからその日の具合や何を食べるかで決めるのだが、またいつもの金谷さんならグラスで白を一杯先に持ってきて「じゃ、何飲む?」って感じなのだが、今日はその友人と仕事上の話があって、ちょっとつまみながらワインを飲んで話そうということでお店に来た次第であった。
そんなお客の顔を見て、ワインというアイテムを使ってしっかりその場を作ってくれる、実に心地よいものである。
この人、以前にいっしょに働かせてもらったことがあるが、常連のお客様にワインリストを持って行かないし、お客様からのリクエストや注文を聞いたのを見たことがない。「今日は、これ、飲んで!」とか「いいのあるよ!」とか「ちょっと待って、今持ってくるから」みたいな・・・。
お客様も「あ〜、じゃ、それ」とか「今日は何飲ませんの?」とか、もう最初から任せっきりで、持ってきたワインも全く見もしないような人もいる。
ワイン通の方ももちろんいれば、そんなこともないただ美味しいお酒と食事を楽しみたいだけで来る人もいる。
常連客以外でもさほど接客を変えるわけでもないので、その店に初めて来てもハマって帰っていくお客様もいらっしゃる。
お会計も、高いワインを勝手に持ってきたりなぞ全くしないのは当然のこと、ちょうどいいお会計金額になっているのである。
この人、いい加減な人のように思われるかもしれないが、全くそんなことはなく、いろんな瞬時の情報を頭の中で瞬時に整理して、200種以上のワインの中から瞬時に決定してお客様の所へ持って行くのである。
最初に書いたが、来店時のお客様のお顔、お連れ様、その来店動機の予測、電話予約時の様子、その時の服装やいつものお好み、通常時のご予算、来店時間帯、他などなどの情報を一瞬に考えるのである。
もちろんワインである以上、ご注文料理にも出来る限り合わせるのは言うまでもないが、ただ料理に合わせるだけじゃなく、一番合わせなきゃいけないものは、実はこんなことなのでしょう、と思う。
たぶん、これはたぶんだが、グラス白ワインを何気に最初に持ってくる時は、考えがまだまとまっていない時なのか? グラスワインで時間を稼いでいるのであろう。たぶん!
本当に勉強になる人である。 また近々行こうと思う。
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