~ ワインの状態と苦い経験を基に ~

ワインの保存状態を日々確認するのは重要な仕事の一つである。

ワインの熟成とは一口に言えばワインの酸化だからである。

抜栓しなくてもボトルの外側からピンポイント的に光をあてて見る方法もあります。
この場合その光の光沢具合や選明度などでそのワインの健康状態を判断するのですが、とても経験が必要な作業です。

ワインの劣化の中で、一番多くまた誰にでもわかるものが「ブショネ」があります。
ブショネとは、抜栓したコルクの液面に付着した部分の匂いがカビ臭かったり、ワイン以外の嫌な臭いがあり、その臭いがワイン全体に回っていたりした物のことを言いますが、通常コルクは使用する前に塩素漂白をして乾燥させたものを使用するのですが、その乾燥状態が不十分だったり塩素の微かな残りが、仕上がりの良くないコルクの割れ目や傷の間に残り、ワイン成分と何らかの反応をして臭いを持つか、保存時のカビやバクテリアによってコルクやその他成分と結合してできると言われています。
味もそうなのですが、まずワインの香りが全くなくなる(感じなくなる)ということです。
ブショネには強弱大小があり、弱小の場合は一般的には意外と気が付かないことが多くプロでも見過ごすケースがあるぐらいなのです。
しかし、もし見過ごした場合は、自分に対してすごいショックなのです。お客様に対しても申し訳ないのですが、プロとしてのプライドが、もうズタズタになるくらいです。それが本当にイヤなのでブショネのワインに対しては今では非常に敏感で、何があっても絶対に提供しないように注意しています。

実は、私の今までの経験の中に3度ほど嫌な思い出があるからなのですが、一つは、まだずんぶんと若い頃にあるホテルのレストランに食事に行った時、食事といってもある意味勉強も兼ねての食事だったのですが、その時に注文したワインがBeaujolais  Moulin-a-Ventでした。
まずソムリエさんが自分でテイスティングしたそのワインを私のグラスに注ぎホストテイスティングになりました。「何か変な臭いだなぁ」とは思ったし、飲んでみても 「本来の味じゃない」とすぐにわかったのですが、自分も若かったし、ホテルのレストランだし、ソムリエさんもテイスティングしていたし、「これ、少し変ですか?」
ともましてや「ワインを代えてください」などとも全く言えずそのまま「はい!」とうなずいてしまいました。
もちろんボトル半分も飲めずに残して帰りました。その時の食事の料理の記憶も全くなく、台無しなものという後悔がありました。

二つ目は、それから何年かして今度は自分がサービス側でやってしまった嫌な思い出です。
まだ経験も浅くしかしワインサービスが一番楽しい時期に接客したあるお客様が、私がおすすめしたSavigny-Les-Beauneと言うワイン。最初にもちろんコルクの匂いを嗅ぎ、微かに「おや?」と思いながら自分でテイスティングしたみたところこれも僅かではあるがワイン自体にも臭いが回っていて本来の美味しさがない。 
変な話ですが、この時の経験の浅いソムリエっていろんなことが頭に浮かぶのです。まず、「どうしようかな?」と思い、「自分がおすすめしたワインだからな?」だからこそ本当は「このワインは状態が良くないので新しいものと代えてきます」と言うべきなのだが・・・。「1本無駄にしちゃうとお店に負担がかかるよな?」とか「わかんないかもしれないな?」とか、「在庫がこれしかなかったよな?」とか、自分に良い様な言い訳ばっかりが脳裏を過ぎるのです。 お金を頂くお客様のことは全く見えなくなってしまい・・・ましてや以前に自分もお客で経験しているのも関わらず・・・です。
結局そのワインはお客様にホストテイスティングしてもらうことにしてしまったのですが、お客様もおかしいと思われた(お顔でわかりました)のですが、「あなたがせっかくすすめてくれたし、あなたもテイスティングしてくれたので これでいいですよ」と。

「ああ~、なんてことしちゃったんだろう!なんで代えますと言わなかったんだろう 」 

もう後悔しても遅いです。

そのお席に追い注ぎにも行けない、案の定最初の一杯を飲まれて後はお残しになられてお帰りになりました。 「ああ、やっちゃった、すいません、ごめんなさい!」って感じです。


それから十年くらいの月日が経ち、三つ目は、ある外国の方々との食事会があったのですが最初のシャンパンPerrier Jouet Belle-Epoqueは同席の外国の方がお選びになりホストテイスティングを私に任してくれた時のことです。
そのシャンパンが極軽いブショネだったのですが、グラスを回していたら臭いが消えてあまり感じなくなったしまったもので、簡単にOKを出してしまったのです。
案の定その外国の方はすぐに気づいたのですが、前菜も食べ終わる時に 「ワインを代えましょう、次の料理はシャンパンより白ワインの方が合いそうだから」と。過去2回もブショネで嫌な思いをしているくせに、なんで同じ過ちをまたしてしまったのだろう。 悔やんでも悔やみきれない「ああ、もう最低!」

この昔の3回のブショネは本当に苦い経験として今でも忘れないし、教訓としていかなる時にでも今の十分に活かされています。
これを最後にもう15~6年以上は ブショネはすぐにお客様にお伝えするし、ワインももちろんお取替えするし、自分が飲む時も非常に敏感に対応しています。
敏感になればなるほど、ブショネワインに当るケースは今でも意外と多く、その大小を含めれば全体で3~5%くらいはあるんじゃないでしょうか?

健康でいいコンディッションのワインほど、味わい深く美味しい物はないのだから・・・。

To be continued

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