~ 田舎ワインの心意気にあるもの ~

Mas de Daumas Gassac というワインをご存知だろうか? 1978年の初リリースとともに瞬く間にフランス国内で雑誌やワイン研究家などの評価を受け、今では有名ワインの仲間入りをしたワインなのだが、造られている所は、南仏のラングドック&ルーション。

この地方はいわゆるデイリーワインの産地としてコストパフォーマンスの高いワインを生産している地方の中で、このワインはある意味飛びぬけた評価と価格(と言っても何万円もするものではなく小売4,000~5,000円位)なのでワインである。


つい先日このワインの赤(白ワインも造っている)を10年ぶりに飲む機会に出会った。以前飲んだのは確か1997~8年でそのワインのヴィンテージは1995であったと記憶している。
今回飲んだワインも偶然にも1995。
当時は「けっこう硬いな」「ちょっと変わった風味だな」が第一印象。このワインのブドウ品種はカベルネ・ソーヴィニョン種を80%位使用し、あとの品種は畑に約500種以上のブドウを栽培していて、その年毎に使用する品種が少しずつ異なるらしいとてもユニークなワインである。

今回このワインを飲むことになったきっかけは、Moulim de Gassac Terrasses de Guilhem’05と言うワインの試飲をしなくてはならず、尚、通常業務も終わってしまいどうしようかと思っていたところ、同業の友人から電話が入り「丁度いい、悪いけど一緒に試飲しようよ」ということになり、知人のお店に出かけたことがはじまりです。
実はこのワインも名前の通り、同じGassacのワインでブドウ品種の違いはあるにせよ、その造り手のポリシーみたいなものを感じるワインである。
ちなみにこのワインのブドウ品種は、グルナッシュ、シラー、サンソー、ムールヴェードル他という具合で、Mas de Daumas Gassacの一番下の弟みたいなものです。

とりあえず試飲のための肴、地鶏のロースト、ラタトゥイユなどを注文(ナスのおひたしを食べていた人もいましたが・・・)し、同銘柄の白、赤と試飲。 白はソーヴィニョン・ブラン種のやや青みがかったとてもきれいで引き締まった酸が心地よく、赤はやや香りのたち具合は弱いもののまた、若干最初にアルコールが強めに感じられるが、飲むとそんなこともなく適度にスパイシーで、優しさのあるタンニンとで飲み口も軽くも無く重くも無く適度、そして適度なブドウの旨みをしっかりと感じるとても好感のもてるワインであった。 
採用決定!
その後に飲むワインとしてその店の店主が選んでくれたワインが冒頭のワインだったのです。

やや温度が低かったせいか、初めは香りの立ち上がりはそれほどでもなかったのですが、その味わいは10数年を経たこなれたもので硬いイメージのあったワインだが非常にスムーズに喉を通り過ぎていく。酸味もアルコールもタンニンも頭出したものは全く無く、十分液体に溶け合って一緒になって流れ、風味の余韻だけを口中に残してくれるすばらしい飲み口。
自然とグラスの中のワインは減っていき、気がつけばさらにボトルは空の状態。久しぶりに熟成の頂点から8割、9割くらいの状態の良いワインが飲めた気がした。

そういえばこのワインを造っている人は2年位前に日本でも上映されたドキュメンタリー映画「モンドヴィーノ」に出てくるエメ・ギベールという爺さんである。映画をご覧になった方はわかるかもしれませんが、いかにも頑固そうなまた、生粋の醸造家であり栽培家(農夫)然とした言動に ある種心を打たれた気がした。

映画のあらすじのようになってしまうが、要は カリフォルニアの有名ワイナリー「ロバート・モンダヴィ」がフランスのラングドック地方で50haあまり畑を作り、新しいワイン造りを手がけようとした際に起こった出来事の中で、市長や有名ワイン・コンサルタントなどを巻き込み田舎町であるラングドックのワインを世界的なビジネスとして発展させようという計画に、このGassacのオーナーであるエメ・ギベール氏が先頭になって住民たちと一緒になって反対し、同時期にあった市長選に反対派の候補者が当選したため、モンダヴィの野望は失敗に終わったというものであった。

われわれもそうなのだが、今多くのワイン愛好者などに購買動機の一つの指標になっているのが、ロバート・パーカーJr氏のワインの味わいに対するスコアリング(100点満点)で、そのパーカー氏からより良い点数をもらおうとワイナリーはワイン造りをしたり、ミッシェル・ロラン氏のようなワイン・コンサルタントを雇いその味わいをある意味計画的に造り出す。
当然価格も高騰するし、手に入りずらくなるからなおさら人気がでる。

その反対にあるのが、ラングドック地方の田舎町でデイリーなワインをテロワール(土壌風土、天候、ブドウ樹の健康状態)に根ざした伝統的なワイン造りをしているワイナリーがあることもけっして忘れてはならないことなのであると思う。
どちらが良い悪いということではないがまた、このようなワインをお互いに比較試飲などしても全く意味がないことですが、 ワインとは? その造りは? それらをどう使いどう販売するのか?、そしてそれをお飲みになる方にどう伝えられるか?  そしてご満足をいただけるようなワインの販売価格設定にどう活かしていくか?  改めていろいろと考えさせられる。

最後にMoulin de Gassac Terrasses de Guilhemのラベルに小さく「Un vin comme autrefois」と記されている。 「昔ながらのワイン」とでも訳すのか この心意気がまたいいではないか。


To be continued

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